「なぜ危機に気づけなかったのか」を読んで

問題解決の前に問題発見が必要。その問題発見をするために必要なスキル、考え方の部分でとても勉強になったのでまとめておきます。
※かなり内容として広範囲な事柄が書かれていたので、自分が気になった部分だけ紹介していきます。

問題発見の7つのスキル

  • 情報のフィルターを避ける
  • 人類学者のように観察する
  • パターンを探し、見分ける
  • バラバラの点を線でつなぐ
  • 価値のある失敗を奨励する
  • 話し方と聴き方を訓練する
  • 行動を振り返り、反省のプロになる

問題の解決から問題の発見へ

包容力をもって問題を受け入れる
  • トヨタは問題を「学び、そして改善する機会」だと捉えている。
  • また、小さな問題をそれだけ取り出して単独で処理しているのではない。
  • 常にその問題をもっと大きなものに関連付けようとしている。
  • この小さな問題はより大きな障害の徴候となるものではないだろうか。何かシステム上の失敗が潜んでいるのではないだろうか。これがトヨタ問題意識だ。
問題を効果的に見つける能力を身につける
  • 問題の発見は、絶え間のない改善のプロセスの結果であることを肝に銘じておかなければならない。
  • 問題発見のプロセスと継続的な改善は密接につながっている。
    • 他のことを犠牲にして一つのことだけに集中すべきではないし、問題の発見が一直線に実績の改善に繋がると期待すべきでもない。
    • 古い問題を解決しようとしているときに、往々にして新たな問題を発見することがある。

情報のフィルターを避ける

確証バイアス
  • 情報のフィルタリングが比較的に無意識のうちに行われることがある。
  • 人は、自分が現在持っている意見や仮説と一致する情報を探し求める傾向があり、また特定の問題に対する自分の現在の姿勢を否定するようなデータを避けたがり、場合によっては無視することすらある。
  • このような傾向を、確証バイアスと呼んでいる。
    • この傾向を利用して人を動かす方法が「Yes」と答えられる質問を繰り返すことだと思う。
    • 相手が持っている意見と一致する部分から議論を進めていけば、確証バイアスが高まる。

人類学者になる

無意識
  • 発言と行動の食い違いが完全に無意識のうちに起きることがある。
  • 人がある状況でどのように振舞うかと尋ねられたとき、その人が通常答えるのはその状況にふさわしいと信じている行動理論だろう。
  • これはその人が信奉している行動理論、つまり建前としての理論であり、求められればその理論を他の人に伝えるだろう。
  • しかし、その人の行動を実際に支配しているのは実践理論、つまり持論である。
観察力に磨きをかける
  • 人と話をするときには、自由に答えられるような質問の仕方をし、誘導尋問にならないように心がけなければならない。
  • 積極的に聴く姿勢を貫く、つまりときどき聞いたことを復唱し、自分の解釈が正しいかどうかの確認を求め、間違っていれば説明してもらうようにする。
  • 観察が一段落したら学んだことを整理する必要がある。
  • 一緒に組んで観察した仲間がいるならメモを比較しあう時間をつくるべき。
    • 双方の観察結果や解釈に相違がないかどうかを調べ、もし違いがあれば同じ状況を違った視点で見ている理由を究明する。
    • 最後に、発見した問題点と改善のための機会を具体的に表にまとめる。
    • そして、その場にいなかった人に自分が学習した内容を投げかけて、相手の反応を見る。
    • 他に知りたいことがあるかどうかを尋ね、漏れがないかを確認する。

パターンを探す

理解するということはパターンを察知すること
直感とな何か?
  • 直感とは基本的にパターンを認識するプロセスである。
  • 人がある状況に直面したとき、過去の経験のパターンに当てはまるかどうかを判断する。
  • パターンを認識するプロセスは往々にして現在の状況と過去の状況の類似性を見つけることである。
  • 色々な状況に遭遇する回数が増えるに連れて、パターンを発見し、それを照合する能力が精密なものになっていく。
  • ※つまりはある事柄をパターン化することを意識的に行うようにしていれば、次に同じような状況に遭遇して時に瞬時に判断することができるようになる。
不完全な類似性
  • 人はいつも類推によって意思決定をしている。
  • 人は似ていると見なした二つの状況の類似性にこだわって、これを過大評価し、多くの基本的な違いを無視する傾向がある。
問題発見のソリューション
  • 問題発見をするときに「問題発見のソリューション(解決手法)」からスタートする場合に特定のトラブルに巻き込まれる。
  • 過去に成功したソリューションをもとに、そのソリューションが適用できる新しい問題点を探しては駄目。
  • これでは「金づちを持って釘を探すようなもの」である。本来は釘を発見し、その釘を打つために金づちを選択するのである。
  • 問題を発見するのにソリューションから始めてしまうと、類似点にはこだわるが、相違点を軽視するとい類推に特有の思考に陥ってしまう。
  • どんな状況でも常にパターンを探すべきだが、必ずしもそのパターンが正確に一致しているとは限らないことに注意が必要である。
パターンを認識する能力を高める
  • 類推力を高める
  • パターンを照合する能力を高めるための簡単な方法。
  • それは問題を麺滅に調べて「既知のこと」「不明瞭なこと」「推定したこと」の三つに区別することから始めること。
  • そうすれば暗黙の想定を明らかにでき、事実と想定の区別をつけざるを得なくなる。
    • 自分の想定を効果的に検証するには七つの質問が役に立つ。
1. この状況における事実はなにか
2. 曖昧な、あるいは不明瞭なことはなにか
3. 明確な推定と暗黙の推定と考えられることは何か
4. 事実と推定を混同していないか
5. 偏見のない考え方を持った外部の人は、自分の想定をどのように評価するだろうか
6. 重要な推定が間違っていることが分かれば、自分の結論も変わるだろうか
7. 単純な想定の正しさまたは間違いを立証するために、データを収集したり、簡単な実験をしたり、あるいは一定の分析をしたりすることが出来るだろうか

点を結びつける

想像力とは一見つながりのないもの同士を結びつける力である。
  • 情報の共有によって人々がわずかなデータの中から「点を結びつける」ことができ、それらが組み合わされ、統合されれば、組織における重大な潜在的問題の発見シグナルとなり得る。
「防止する」という心構え
  • 問題や状況をとことんまで考え抜く際に必要な能力は「統合的思考能力」と呼ばれる能力である。これは相反する、調和しないアイデアを合成する能力を磨くという意味である。
  • 優秀な統合的思考能力を持つ人の特徴は四つある。
1. ある状況における「それほど明らかではないが、関連性がありそうな要因」を広い範囲で、積極的に探す。複雑な問題を歓迎する。最善の回答が得られるのはそのような場合が多いから。
2. 単純に直線的な原因と結果の関係を考えない。ほとんどの結果は複数の原因によって生じることを認識しているから。
3. 「問題を全体として考える」個々の部分に切り離すのではなく、体系的に調べる。他の分野への影響力を重んじる。
4. 単純に二者択一な選択をしない。多くの断片的な情報だけでなく、異なった、また矛盾するアイデアを組み合わせ、つなぎあわせて革新的なアイデアを生む。

価値のある失敗を奨励する

容認できる失敗とできない失敗
  • この二つを見分けるためには、失敗をした本人が「その前」「その最中」「その後」にどういう行動をとったかを知る必要がある。
  • まず、その行動を取った本人の意思決定プロセスを理解しなければならない。
  • 次に、その行動が計画した進路を逸脱したとき、本人がいかなる反応を見せ、対応したのかを調べなければならない。
  • 最後に、その失敗の影響に対してどのような行動を取ったか、特にどこまで自分の責任を認め、その失敗からどれくらい学ぼうとしたかを評価する必要がある。
  • 失敗の前
    • 質の高い意思決定プロセス
1. 実行グループが複数の選択肢を考案し、その良否を評価する。
2. 鍵を握るであろう仮説を見付け出して、それをテストする。
3. 一般的な情報だけでなく、既存の概念の反証となる情報を収集している。
4. 先入観を持たない専門家に意見を聴く。
5. 最悪のシナリオを検討し、非常事態の計画を立てている。
    • 確認項目
1. 複数の選択肢の検討を怠っていなかったか?
2. 反対意見を押さえつけていなかったか?
3. 情報の集め方が偏っていなかったか?
4. 計画を実行に移す前に適切な実験やテストを行ったか?
  • 活動の最中
    • 様々な視点からの反応を収集し、当初の目的と目標に対する進展具合を定期的にチェックしていたか。
    • 否定的な反応が出てきたとき、外部条件が変化したときに当初の計画をきちんと修正したか。
  • 活動の後
    • まずは責任を素直に認めること。
    • その失敗を個人で済ませるのではなく、集団として組織として、同じ過ちを起こさないように教訓を組織全体で分かち合う。
    • 過去の失敗から学べることは多くある。定期的にチームや組織の失敗を振り返ると良い。

話し方と聴き方を訓練する

コミュニケーション上の過ち
  • 話し手
1. 重要な情報の脱落や偏った情報の提供がないか確認する。
2. 脱落が起きるのは話し手が急いでいるか、聞き手がすでに知っていると思い込むような場合。
3. ゆっくりと話したり抑揚をつけることで重要な点を強調する。
4. 重要なメッセージは繰り返し言葉にする。
5. 沈黙を同意と受け取っては駄目。
  • 聞き手
1. 相手が話し終わらないうちに結論を出しては駄目。
2. 相手が話している最中に、どう答えようかと考えては駄目。
3. 言葉以外の合図を見落としがち。
4. 自分が聞いたことを確認することが非常に重要。
5. 他のことを考えて、重要なことを聞き逃さないようにする。
率直で効果的な話し方
  • 問題を見つけた時に、それをはっきりと主張するための四段階のプロセスがある。
1. 自分の懸念を伝える相手には、名前で話しかける。
2. 自分の懸念を簡潔、明瞭かつ「感じたまま」に言い表す。一人称を使うと良い。
3. 問題の解決法を一つないし二つ提案する。考えられる範囲の解決策を提案することは、その問題への対処に手を貸す責任を担おうという意欲を伝えるシグナル。
4. 自分の意見について、相手の合意を取り付ける。
  • まず説得する相手のことを知る。
  • 次に相手はどういう考え方をし、どういう意思決定をするのかを知る。
  • 最後に、相手が証拠として求めているのはどんなものかを考えて提出する。
聴き方
  • 聞き取った内容を自分の言葉で言い換えて、正しく理解したかどうかを確かめる。聞き取った内容を記録化し、整理するために言葉や図表を使ってノートに書き記す。
  • 聞き手が話のある部分に非常に強く反応し、そのあとの部分を聞き逃すと、効果的な聞き方が全く出来なくなる。
  • 「完全に理解するまではいかなる評価も避ける」

行動を振り返り、反省のプロになる

事後検討会:期待と危険
  • 一連の出来事を手続きの流れとして図表化するなど、視覚的な助けを借りる。建設的で、事実に即した討論を促すのに役に立つ。
  • 「回想と検討」のプロセスでは、次の四つの基本的な疑問点に焦点を絞る。
1. 我々は何をすることを目指したのか
2. 実際には何が起きたのか
3. なぜそれが起きたのか
4. 次回はどのようにすれば良いか
デリベレイト・プラクティス
  • 特定の上達目標を設定し、すぐにフィードバックが得られるような仕組みを整える。
  • 自分がうまく実行できないことに焦点を絞る。
  • 一時に一つのことに集中するが、全体としては様々な技能を鍛えあげることを重視する。
  • プロセス重視。

優れた問題発見者の心構え

新しい心構えの三つの要素
  • 知的好奇心
    • 最も重要なことは、これまでの自分の判断や結論を疑ってかかることをいとわない姿勢。
    • 問題を発見するためには、時には曖昧さに立ち向かい、一見矛盾するような信号を読み解く能力が必要である。
    • また、乱雑な状況の中でその意味を理解する能力と、見慣れた状況を異なった視点から観察しようとする積極的な姿勢が要求される。
    • 目新しいものを学ぶという経験によって、新たな理論構成の枠組みだけでなく、見慣れた状況に対する考え方に関する新しい概念モデルが得られる。
  • システム思考
    • 問題を一歩離れたところから見て、なぜミスが起きたのかに疑問を持つ。
    • もっと基本的な組織上の問題が、些細なミスが起きやすいような条件を生み出したのではないか?と考える。
    • 明らかに問題だとわかるものの背後に何が潜んでいるのだろうか。技術的な過失はあるだろうか。
  • 健全な偏執狂
    • いかに成功していようとも、すべての組織は数々の問題を抱えていることを承知している。
    • 自分が過ちを犯しやすい存在であることを承知しており、無敵だというオーラを身につけようとしない。
    • 問題は問題がないと思っていることであり、問題を抱えていることが問題だと考えていること。


たくさん勉強させて頂きました。何度か繰り返し読みたい本です。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。

なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力

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